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コロナウイルス:重症COVID-19における脳や脈絡叢の細胞タイプの調節障害

Nature 595, 7868 doi: 10.1038/s41586-021-03710-0

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は主に呼吸器系を標的とするが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者や生存者は神経学的な症状に苦しむことがある。しかし、COVID-19患者の脳で影響を受ける細胞過程や分子過程については、不偏的には理解されていない。今回我々は、14名の対照者(末期インフルエンザ患者1名を含む)と8名のCOVID-19患者の前頭皮質および脈絡叢に由来する計30の試料から得られた6万5309の単一核のトランスクリプトームのプロファイリングを行った。系統的な解析の結果、脳でSARS-CoV-2の分子的痕跡は見つからなかったが、脈絡叢のバリア細胞が末梢の炎症を感知して脳内へ中継することを示す広範な細胞の摂動が観察され、末梢T細胞が実質へ浸潤することが示された。我々は、COVID-19に関連するミクログリアとアストロサイトの亜集団を発見し、これらの集団が、以前ヒト神経変性疾患で報告された病的な細胞状態と共通する特徴を有することを見いだした。COVID-19では、上層の興奮性ニューロン(ヒトでは進化的に拡大されていて、認知機能と関連付けられている)のシナプス信号伝達が、選択的に影響を受けていた。COVID-19に関連した摂動は、全ての細胞タイプにわたって慢性脳疾患で見られるものと重複しており、認知、統合失調症、うつ病と関連付けられている遺伝的バリアントに存在していた。今回の結果と公開されているデータセットは、COVID-19に関連して現在観察されている神経学的疾患や、今後出現する可能性のある同様の疾患を理解するための分子的な枠組みをもたらす。

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