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免疫学:ラクダ化マウスやラマに由来するナノボディはSARS-CoV-2変異株を中和する

Nature 595, 7866 doi: 10.1038/s41586-021-03676-z

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が始まって以来、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、全世界で数百万人の死者を出している。複数のワクチンがすでに運用されているが、SARS-CoV-2の受容体結合ドメイン(RBD)は絶えず進化するため、ワクチンの有効性が脅かされている。特に、新たに出現した変異株であるB.1.1.7やB.1.351、P.1(それぞれ英国、南アフリカ、ブラジルで最初に検出された)は、COVID-19から回復した患者由来の血清や緊急時使用が承認されている免疫療法の有効性を低下させている。ウイルスの回避を防ぐ見込みのある代替策として、ラクダ科動物のVHH(重鎖抗体の可変重鎖領域;別名ナノボディ)の使用が挙げられる。VHHは、従来の抗体では近接できないことが多いエピトープを認識できる。今回我々は、ラマから、およびアルパカやヒトコブラクダ、フタコブラクダからクローン化したVHHを産生するように設計したマウスから抗RBDナノボディを単離した。これらのナノボディにおいて、我々は、強力な中和活性を持つ2つのグループを特定した。グループ1のナノボディは、コロナウイルス類で高度に保存されているが、ヒト抗体にはほとんど標的とされないRBD領域を認識することで連続抗原変異(ドリフト)を回避する。グループ2のナノボディは、RBDとACE2の接触面だけにほぼ集中しており、E484KやN501Y置換を持つSARS-CoV-2変異株を中和しない。しかし、グループ2のナノボディは、ホモ三量体として発現させた際にはこれらの変異株に対する完全な中和活性を保持しており、我々が知る限り、その活性はSARS-CoV-2に対して今までに作られた最も強力な抗体に匹敵する。これらの知見は、多価のナノボディは、ACE2結合ドメインに対するアビディティーの増強と、ヒト抗体の大部分が近接できない保存されたエピトープの認識という2つの異なる機構によって、SARS-CoV-2変異を克服することを示唆している。従って、新たなSARS-CoV-2変異株は今後も出現し続けると思われるが、ナノボディはワクチンの効果が減弱した時にCOVID-19による死亡を抑止するための有望なツールとなる。

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