コロナウイルス:COVID-19患者におけるさまざまな機能的自己抗体
Nature 595, 7866 doi: 10.1038/s41586-021-03631-y
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、過剰で誤った宿主免疫応答を特徴とする幅広い臨床表現型を示す。自然免疫の病理学的な活性化は重症のCOVID-19で十分に明らかにされているが、疾患の進行に及ぼす自己抗体の影響はあまりよく分かっていない。今回我々は、ハイスループットの自己抗体発見技術であるrapid extracellular antigen profilingを用いて、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に感染した194人のコホート(COVID-19患者172人と、軽症あるいは無症候性感染の医療従事者22人からなる)において、2770の細胞外タンパク質や分泌タンパク質(エキソプロテオームのタンパク質)に対する自己抗体のスクリーニングを行った。その結果、COVID-19患者は、非感染者と比較して自己抗体の反応性の顕著な増強を示し、また、免疫調節タンパク質(サイトカイン、ケモカイン、補体成分、細胞表面タンパク質など)に対する自己抗体の保有率が高いことが分かった。我々は、これらの自己抗体が、免疫受容体シグナル伝達の阻害や末梢免疫細胞の構成の変化を引き起こすことによって、免疫機能を撹乱したり、ウイルス学的制御を障害したりすることを明らかにし、また、SARS-CoV-2感染モデルマウスで、これら自己抗体の標的タンパク質に対する抗体投与によって疾患の重症度が上昇することを見いだした。組織関連抗原に対する自己抗体の解析から、特定の臨床的特徴との関連が明らかになった。我々の知見は、COVID-19では、エキソプロテオームを対象とする自己抗体が病理学的な役割を持ち、これらが免疫機能や臨床転帰との関連にさまざまな影響を及ぼすことを示唆している。