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微生物学:ヒトの腸由来の太古の微生物ゲノムの再構築

Nature 594, 7862 doi: 10.1038/s41586-021-03532-0

工業社会集団における腸内微生物の多様性の喪失は慢性疾患と関連付けられており、我々の祖先の腸内マイクロバイオームを研究する重要性が浮き彫りになっている。しかし、工業化以前のヒトの腸内マイクロバイオームの組成については、比較的わずかしか知られていない。今回我々は、古糞便(palaeofaeces)に由来する微生物ゲノムの大規模なde novoアセンブリを行った。米国南西部およびメキシコで発見され、ヒトの古糞便であると確証された8点の試料(1000~2000年前のもの)には保存状態の良好なDNAが含まれており、我々はこれらに基づいて中品質および高品質の微生物ゲノムを計498例再構築した。ヒトの腸を起源とし、かつそれが太古のものであることを示す証拠が最も強力だったのは181例のゲノムで、そのうち39%は、これまで報告されたことのない種レベルのゲノム断片であった。チップ年代推定(tip dating)からは、ヒトの主要な共生微生物Methanobrevibacter smithiiについて、多様化のおおよその時系列が示唆された。8か国で集めた現在のヒトの腸内マイクロバイオーム試料789例との比較により、これらの古糞便試料が、工業社会のヒトの腸内マイクロバイオームよりも、非工業社会のヒトの腸内マイクロバイオームに類似していることが分かった。古糞便試料の機能プロファイルからは、これらの試料では、工業社会のヒトの腸内マイクロバイオームと比べて、抗生物質耐性遺伝子やムチン分解遺伝子の存在量が顕著に少なく、可動性遺伝因子がより多く存在することが明らかになった。今回の研究は、太古のマイクロバイオームに由来する、これまで報告されていなかった腸内微生物の発見や特徴付け、そして、古糞便に基づくゲノム再構築を通したヒト腸内微生物相の進化史の探索を促進するだろう。

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