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コロナウイルス:防御免疫を誘導するための、アジュバントを用いたCOVID-19サブユニットワクチン

Nature 594, 7862 doi: 10.1038/s41586-021-03530-2

世界人口にワクチン接種するための新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンのポートフォリオの開発は、依然として公衆衛生上の緊急事項である。今回我々は、I53-50タンパク質ナノ粒子の足場に、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)スパイクタンパク質の受容体結合ドメインを提示したサブユニットワクチン(以降RBD–NPと表記)が、アカゲザル(Macaca mulatta)でSARS-CoV-2に対するロバストかつ持続的な中和抗体応答や防御を誘導できることを示す。我々は、スクアレンベースの水中油滴型エマルションであるEssai O/W 1849101、α-トコフェロール含有のスクアレンベースの水中油滴型エマルションであるAS03、Toll様受容体7(TLR7)アゴニストをミョウバンに吸着させたAS37、ミョウバン添加TLR9アゴニスト製剤であるCpG1018-ミョウバン、そしてミョウバンの5つのアジュバントを評価した。その結果、AS03、CpG1018-ミョウバン、AS37あるいはミョウバンと共にRBD–NPを免疫感作すると、十分な中和抗体応答やCD4 T細胞応答が誘導され、咽頭、鼻孔、気管支肺胞洗浄液でSARS-CoV-2感染に対する防御がもたらされた。生ウイルスに対する中和抗体応答は、AS03添加RBD–NP(RBD–NP-AS03)のワクチン接種後180日間維持され、感染からの防御と相関していた。RBD–NPによる免疫感作は、B.1.1.7 SARS-CoV-2変異株を効果的に交差中和したが、B.1.351変異株に対する応答は低下した。RBD–NP-AS03ではB.1.351の中和が4.5分の1に低下したのに対し、RBD–NP-AS37で免疫感作された群では、B.1.351の中和が16分の1に低下した。これは、これらのアジュバントによって誘導される中和抗体応答の程度には差があることを示唆している。さらに、RBD–NP-AS03の免疫原性は、AS03アジュバントと共に用いた、安定化された融合前型スパイク免疫原(HexaPro)のものと同等であった。これらのデータは、アジュバントを用いたRBD–NPワクチンがSARS-CoV-2に対する防御免疫の増強に有効であることを浮き彫りにしており、このワクチンの第I/II相臨床試験実施につながっている(ClinicalTrials.gov登録番号:NCT04742738とNCT04750343)。

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