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コロナウイルス:COVID-19進行中の肺病理の空間的全体像

Nature 593, 7860 doi: 10.1038/s41586-021-03475-6

最近の研究によって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の病理や免疫応答についての手掛かりが示されている。しかし、感染部位における感染細胞と免疫系との相互作用についての詳細な研究はまだない。今回我々は、36のタンパク質の発現を標的とした高パラメーターイメージングマスサイトメトリーを用いて、ヒト急性肺損傷[重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染による損傷を含む]の細胞構成や空間的構造を単一細胞分解能で調べた。これらの空間的に分解された単一細胞データによって、広範囲の免疫細胞浸潤の分布と共に、感染して損傷を受けた肺の無秩序な構造が明らかになった。好中球の浸潤は細菌性肺炎の、マクロファージの浸潤はCOVID-19の特徴であった。我々は、SARS-CoV-2は主に肺胞上皮細胞に感染し、肺損傷と関連した局所的な高炎症性の細胞状態を誘導することを示す証拠を提示する。また我々は、COVID-19の症状発現から致死的転帰までの経過時間を利用して、病気の進行に伴ってマクロファージの血管外漏出や、間葉系細胞と繊維芽細胞の数が増加しており、同時にこれらの細胞タイプ間の接近性が高まっていることを明らかにした。これはおそらく、損傷を受けた肺組織を修復しようとした結果と見られる。我々のデータによって、構造的、免疫学的、臨床的な観点から、生物学的に説明可能な肺病理の全体像を作製することが可能となった。我々は、この全体像を用いて、巨視的な像から単一細胞レベルまでヒト肺の病態生理学的特徴を明らかにしており、これによってCOVID-19や肺の病理学一般を理解するための重要な基盤がもたらされる。

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