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生化学:NOS架橋を持つリシン–システイン酸化還元スイッチが酵素の機能を調節する

Nature 593, 7859 doi: 10.1038/s41586-021-03513-3

システイン残基間のジスルフィド結合は、タンパク質の重要な翻訳後修飾であり、酵素中で酸化還元活性を持つ触媒基として、あるいはタンパク質の機能を制御するアロステリックな酸化還元スイッチとして、タンパク質の構造と安定性に重要な役割を果たしている。システイン残基は、ジスルフィド架橋を形成することに加えて、活性酸素種による酸化を受けやすく、そのため、活性酸素種の除去に中心的な役割を果たすだけでなく、生物学的および病理学的状況で、細胞のシグナル伝達やコミュニケーションにも中心的な役割を担っている。酸化されたシステイン種は非常に反応性が高く、例えば、一部の酸化還元酵素の活性部位にあるチロシンと共有結合を作る。しかし我々の知る限り、ジスルフィド以外の共有結合性架橋を持つ調節スイッチの存在は、これまで明らかになっていなかった。今回我々は、淋病の病原体である淋菌(Neisseria gonorrhoeae)の酵素トランスアルドラーゼで、システイン残基とリシン残基間に、アロステリックな酸化還元スイッチとして働くNOS架橋を含む共有結合性架橋が存在するのを発見したことを報告する。このタンパク質の酸化状態と還元状態のX線構造を解析することにより、荷重のかかったバネ機構が明らかになった。この機構では、酸化還元活性化に応じて構造の弛緩が起こり、これが、タンパク質表面のアロステリックな酸化還元スイッチからタンパク質内部の活性化部位へと伝わる。この弛緩が、重要な触媒残基の再配置につながり、酵素活性が数桁上昇する。この酸化還元スイッチは、ナイセリア科の他の菌が持つ類似のトランスアルドラーゼでも非常によく保存されていて、例えば、髄膜炎菌(Neisseria meningitides;小児の髄膜炎や敗血症の主要な原因菌)のトランスアルドラーゼにも存在する。タンパク質構造データバンク(Protein Data Bank)を調べたところ、このNOS架橋は、生命の全てのドメインにわたって(ヒトも含め)さまざまなタンパク質ファミリーに見られ、また、触媒作用や調節作用のホットスポットに位置することが多いと分かった。これらの知見から、タンパク質やペプチドの設計戦略だけでなく、リシン–システイン酸化還元スイッチを標的とする新しいタイプの薬剤や抗体の開発戦略にも役立つ情報が得られるだろう。

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