コロナウイルス:コミュニティー検査でのSARS-CoV-2のB.1.1.7系統感染例における死亡率の上昇
Nature 593, 7858 doi: 10.1038/s41586-021-03426-1
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)系統B.1.1.7は、2020年9月に英国で初めて検出された変異株であり、その後、世界各国に広がっている。B.1.1.7が既存の変異株よりも高い伝播性を持つことは、いくつかの研究で確かめられているが、病気の重症度に何らかの変化をもたらすかどうかは、まだ確定していない。今回我々は、2020年11月1日から2021年2月14日までの間に英国のコミュニティー検査で見つかった、224万5263件のSARS-CoV-2陽性例と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連した1万7452件の死亡例とを結び付けたデータセットを解析した。この系統の変異はスパイク(S)遺伝子のPCR増幅を妨げるため[S gene target failure(SGTF)として知られる]、これらの陽性例のうち114万6534件(51%)について、B.1.1.7変異株の感染の有無を決定できた。SGTF状態が分かっていた4945件の死亡例に基づいて、年齢、性別、民族性、貧困状態、介護施設居住、居住自治体、検査日時について補正した後、SGTFのある場合はない場合に比べて、死亡リスクが55%(95%信頼区間39~72%)高いと推定された。これは、55~69歳の男性の場合、コミュニティー検査で陽性判定後28日以内の死亡の絶対リスクが0.6%から0.9%(95%信頼区間0.8〜1.0%)へと上昇したことに相当する。SGTFの誤分類やSGTF状態の見落としを補正すると、B.1.1.7変異株に関連した死亡リスクは既存の変異株に比べて61%(42~82%)高いと推定される。今回の解析は、B.1.1.7変異株は既存のSARS-CoV-2変異株に比べて伝播性が高いだけでなく、重症化を引き起こす可能性が高いことを示唆している。