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コロナウイルス:SARS-CoV-2の変異株B.1.351とB.1.1.7の抗体抵抗性

Nature 593, 7857 doi: 10.1038/s41586-021-03398-2

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは世界全体に広く影響をもたらしており、その原因ウイルスである重症急性呼吸器症候群ウイルス2(SARS-CoV-2)は拡散を続けている。このパンデミックを終息させるには、効果的な介入策の開発が必要である。モノクローナル抗体を単独で、あるいは組み合わせて使う治療法が緊急時使用許可を受けており、他にも多くの治療法の開発が進められている。さらに、COVID-19に対して約95%の防御効果を示す2種類のワクチンをはじめ、複数のワクチン製剤が有望と見られている。しかしこれらの介入策は、2019年に出現した最初のSARS-CoV-2を対象にしたものである。最近、英国ではSARS-CoV-2変異株B.1.1.7が、南アフリカではB.1.351が検出されており、これらは伝播しやすいとされ、またスパイクタンパク質に多くの変異があるために影響が懸念されている。今回我々は、B.1.1.7変異株が、スパイクタンパク質のN末端ドメインに対するほとんどのモノクローナル抗体による中和に抵抗性を示すこと、また受容体結合ドメインに対するいくつかのモノクローナル抗体に対しても他に比べて抵抗性が高いことを明らかにする。B.1.1.7変異株は、COVID-19から回復した患者由来の血漿やSARS-CoV-2に対するワクチン既接種者由来の血清に対する抵抗性はそれほど高くはない。B.1.351変異株は、N末端ドメインに対するモノクローナル抗体による中和に抵抗性であるだけでなく、受容体結合ドメインの受容体結合モチーフに対する多数の患者由来モノクローナル抗体による中和にも抵抗性を示す。これは主としてE484K置換を引き起こす変異のためである。さらに、野生型のSARS-CoV-2に比べると、B.1.351株は回復期血漿やワクチン既接種者由来血清による中和に対して、抵抗性が著しく高いことが分かった(前者に対しては9.4倍、後者に対しては10.3~12.4倍)。B.1.351変異株やスパイクタンパク質に類似の変異を持つ新興変異株は、モノクローナル抗体治療にとって新たな難問となり、また現在のワクチンの防御効果を脅かすだろう。

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