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コロナウイルス:SARS-CoV-2に対する抗体免疫の進化

Nature 591, 7851 doi: 10.1038/s41586-021-03207-w

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の現在までの感染者数は7800万人、死者数は170万人以上に上る。感染は中和活性を有する抗体のさまざまなレベルの産生と関連しており、動物モデルではこれらの抗体によって感染を防ぐことができる。抗体のレベルは時間とともに減少するが、我々が知る限り、再感染時の抗体産生に必要となる記憶B細胞の特性や質についてはまだ調べられていない。今回我々は、SARS-CoV-2感染後1.3か月と6.2か月の時点で評価した87人のコホートにおける体液性記憶応答について報告する。我々は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)に対するIgMやIgGの抗体価は、この期間中に有意に減少するが、IgAはあまり影響されないことを見いだした。同時に、血漿中の中和活性は、シュードタイプウイルスアッセイで5分の1に低下した。対照的に、RBD特異的な記憶B細胞の数は、感染後6.2か月の時点では変化しなかった。記憶B細胞は、感染後6.2か月の時点でクローン性のターンオーバーを示し、またそれらが発現する抗体は、体細胞高頻度変異をより多く持ち、RBD変異に耐性を示し、効力が高まっていた。これは、体液性免疫応答の持続的な進化を示している。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発症後4か月の時点で無症候性の被験者から得られた腸生検試料の免疫蛍光解析やPCR解析によって、14人中7人の小腸でSARS-CoV-2の核酸や免疫反応性の持続が示された。我々は、SARS-CoV-2に対する記憶B細胞応答は、感染後1.3〜6.2か月に、抗原持続性に一致する形で進化すると結論する。

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