Article

量子物理学:核励起子のコヒーレントなX線–可視光制御

Nature 590, 7846 doi: 10.1038/s41586-021-03276-x

量子ダイナミクスのコヒーレントな制御は、多くの基礎研究や応用に重要である。可視光やそれより波長が長い領域では、近共鳴光場が、電子のダイナミクスを制御する主要なツールとなってきた。最近、極端紫外領域において、位相制御の時間分解能が数アト秒のコヒーレント制御が実証された。硬X線エネルギー(5~10 keV以上)では、メスバウアー核は光の無反跳吸収と無反跳放出に起因する狭い核共鳴を特徴とし、これらの共鳴の分光法は、物質の磁気特性、構造特性、力学的特性の研究に広く用いられている。メスバウアー分光法の威力と適用範囲は、さまざまな制御技術を用いて大きく改善できることが示されている。しかし、適切な形状の近共鳴X線場を用いた原子核のコヒーレント制御は、未解決の課題である。今回我々は、こうした制御を実証し、2つのX線パルス間の調整可能な位相を用いて、原子核の励起子ダイナミクスをコヒーレントな増強励起とコヒーレントな増強発光の間で切り替えた。我々は、最先端のX線施設によって得られる単一パルスを、調整可能な二重パルスに成形する方法を提示するとともに、数ゼプト秒の時間スケールでの位相制御の時間的安定性を実証する。今回の結果は、原子核のコヒーレント光学制御の可能性を解き放ち、原子核のラムゼー分光法やスピンエコー類似技術への道を開くものだ。これらの手法は、核量子光学を進歩させるだけではなく、X線時計や周波数標準の実現にも役立つはずである。我々は、長期的には、メスバウアー科学における長年の課題である、原子核の非平衡ダイナミクスの時間分解研究を目指している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度