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コロナウイルス:K18-hACE2マウスにおける嗅覚障害を含むCOVID-19の治療と発症機序

Nature 589, 7843 doi: 10.1038/s41586-020-2943-z

現在進行中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)は、相当な罹患率と死亡率と関連付けられている。このパンデミックの最初の数か月で多くの知見が得られたが、COVID-19発症機序の多くの特徴はいまだ解明されていない。例えば、嗅覚障害はよく見られる症状であり、嗅覚障害を示す多くの患者では、呼吸器症状は全くあるいはほとんど見られない。COVID-19の原因である重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)を実験的に感染させた動物での研究は、ヒト患者では簡単に調べられないCOVID-19のさまざまな面を研究する機会をもたらす。COVID-19の重症度は無症候性から致死性までさまざまだが、ほとんどの実験的な感染では軽度の場合についての知見が得られている。今回我々は、本来は重症急性呼吸器症候群(SARS)の研究用に開発されたK18-hACE2トランスジェニックマウスを用いて、SARS-CoV-2の感染が、肺に、また一部のマウスでは脳に重度の疾患を引き起こすことを示す。重度の肺炎を呈するマウスでは、血栓症と血管炎の証拠が検出された。さらに、COVID-19から回復した患者の回復期血漿の静脈内投与は、致死性疾患を防御することが分かった。マウスは感染後の早い時点で嗅覚障害を発症した。注目すべきことに、回復期血漿を感染前に投与すると臨床疾患のほとんどの兆候が予防されたが、嗅覚障害は予防されなかった。従って、K18-hACE2マウスは、軽度および致死性の両方のCOVID-19の病理学的基盤に対する研究や、治療的介入を評価するための有用なモデルである。

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