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疫学:COVID-19の移動ネットワークモデルは不平等を説明し、活動再開のための情報をもたらす

Nature 589, 7840 doi: 10.1038/s41586-020-2923-3

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによって人の移動パターンは大きく変化しており、そうした移動の変化が重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染拡大に及ぼす影響を捉えることのできる疫学モデルが求められている。今回我々は、細粒度の複数の動的移動ネットワークを統合して米国の10の大都市圏でSARS-CoV-2の感染拡大をシミュレートする、メタ集団のSEIRモデル[感受性者(susceptible)、潜伏期感染者(exposed)、感染者(infectious)、隔離者(removed)からなる感染症数理モデル]について報告する。これらの移動ネットワークは携帯電話データに由来し、計9800万人について、居住区域(国勢調査細分区グループ)から飲食店や宗教施設といった目標地点までの動きを1時間単位でマッピングしたもので、5万6945の国政調査細分区グループが54億の毎時辺で55万2758の目標地点と関連付けられている。これらのネットワークを統合することで、集団の行動には経時的な変化が大きいものの、比較的単純なSEIRモデルが実際の感染症例の推移と正確に一致し得ることが明らかになった。我々のモデルは、ごく少数の「スーパースプレッダー」地点が感染の大多数を占めており、各目標地点の最大利用者数の制限が一律の移動制限よりも効果的であることを予測している。このモデルはまた、人種的および社会経済学的に不利な立場にある集団で感染率が高いのは、単に移動性の差異によるものであることも正確に予測している。不利な立場の集団は移動をあまり大きく抑制できておらず、そうした人々の訪れる目標地点がより混雑しているためにリスクがより高くなっていることが分かったのである。我々のモデルは、誰がどこで感染しているかを捉えることで詳細な分析を支援し、COVID-19への効果的で公平性の高い政策対応に情報を与える得るものである。

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