Article

コロナウイルス:SARS-CoV-2のコーディング能力

Nature 589, 7840 doi: 10.1038/s41586-020-2739-1

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、現在進行中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの原因である。SARS-CoV-2の病原性と抗原の能力を理解して治療手段を開発するには、このウイルスが発現するタンパク質の完全なレパートリーの分析が不可欠である。SARS-CoV-2のタンパク質コーディング能力の現在のマップは、計算予測に基づくもので、他のコロナウイルスとの相同性に依存している。タンパク質の全数量はコロナウイルス間で異なっており、特にアクセサリータンパク質についての変動が大きいため、SARS-CoV-2タンパク質に特異的な範囲について、偏りなく、かつ制限をかけないようにして、特徴を明らかにすることが極めて重要である。今回我々は、一連のリボソームプロファイリング技術を用いて、SARS-CoV-2ゲノム中のコーディング領域に関する高分解能マップを作製した。このマップにより、ウイルスのカノニカルなオープンリーディングフレーム(ORF)の発現の正確な定量が可能になり、これまで注釈付けされていなかった23個のウイルスORFが見つかった。これらのORFには、調節性の役割を持つと思われる上流ORFと、既存のORF内にある複数の内部インフレームORF(N末端が切断された産物を生じる)、また新規なポリペプチドが作られる内部アウトオブフレームORFが含まれている。さらに、ウイルスmRNAは宿主mRNAよりも効率よく翻訳されることはないが、ウイルス転写産物のレベルが高いためにウイルスの翻訳は宿主の翻訳よりも優勢であることも分かった。我々の研究は、今後の機能研究の基礎を作るであろう情報資源を提供している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度