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コロナウイルス:無傷のウイルス粒子上のSARS-CoV-2スパイクタンパク質の構造と分布

Nature 588, 7838 doi: 10.1038/s41586-020-2665-2

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のウイルス粒子は脂質二重層に囲まれており、そこからスパイク(S)タンパク質三量体が突き出ている。高度にグリコシル化されたS三量体は、アンジオテンシン変換酵素2受容体に結合して、標的細胞へのウイルス粒子の侵入を仲介する。Sのコンホメーションには高い柔軟性が見られ、Sは受容体結合部位の露出を調節した後、全面的な構造再編成を経て、ウイルス膜と細胞膜の融合を駆動する。これまでに、クライオ電子顕微鏡を用いて、Sタンパク質の可溶性状態、過剰発現状態、精製状態での構造とコンホメーションが詳細に研究されてきたが、ウイルス粒子表面でのSの構造と分布は分かっていなかった。今回我々は、クライオ電子顕微鏡法とクライオ電子断層撮影法を用いて、無傷のSARS-CoV-2ウイルス粒子の画像化を行い、ウイルス粒子表面上のS三量体の高分解能構造、コンホメーションの柔軟性、分布をin situで決定した。これらの結果は、ウイルス粒子上のSのコンホメーションを明らかにしており、感染あるいはワクチン接種の際のSと中和抗体の間の相互作用を理解するための基盤をもたらす。

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