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進化学:同所的種分化の過程におけるゲノム分岐の対照的なシグネチャー

Nature 588, 7836 doi: 10.1038/s41586-020-2845-0

単一の種の「明らかに識別できる変種」から「明確に確立された種」への移行、特に遺伝子流動に対する地理的障壁がない場合の移行(同所的種分化)は、ダーウィンの時代から進化生物学における謎であった。ゲノム規模での分化は種分化の特徴で、種分化過程を完結させる不可逆的な生殖障壁(不和合性)の進化の可能性を高めるが、こうしたゲノム規模での分化の蓄積は遺伝子流動によって妨げられる。理論的には、分岐選択を受けた形質の遺伝的構造は同所的種分化が起こるかどうかに影響を与え得ると予測されているが、種にはそれぞれ独特の生物学的性質と進化史があり、複数の種にわたって包括的なデータを収集・統合することが難しいために、この理論の経験的試験はほとんど行われていない。今回我々は、新熱帯区のカワスズメ科魚類(シクリッド類)の進化的に新しい種群(Amphilophus spp.)において、個体群間および種間のゲノム分岐について調べた。新たなゲノムアセンブリを作成し、453ゲノムの塩基配列を再解読することで、分岐に重要と示唆されてきた形質の遺伝的構造が明らかになった。生態学的パフォーマンスや配偶者選択に影響を及ぼす単一遺伝子形質あるいは少数遺伝子形質が異なる種では、顕著に局在化したゲノム分化が見られた。対照的に、多遺伝子形質が分岐してきた種における分化はゲノムに広範に見られ、全体としてはるかに分化度が高く、これは遺伝子流動に対する効果的で安定したゲノム規模の障壁の進化と一致している。従って我々は、単純な形質構造は、必ずしもこれまでに示唆されていたほど、遺伝子流動を伴う種分化につながるとは限らないが、多遺伝子構造は同所での迅速かつ安定した種分化を促進できると結論する。

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