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コロナウイルス:C5a–C5aR1軸の活性化と関連したCOVID-19の炎症

Nature 588, 7836 doi: 10.1038/s41586-020-2600-6

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染による疾患であり、パンデミック(世界的大流行)をもたらしている。C5a補体因子とその受容体であるC5aR1(別名CD88)は、好中球や単球を動員して活性化することにより、いくつかの炎症応答の開始と維持に重要な役割を果たしている。今回我々は、ほとんど症状のない患者や、肺炎や急性呼吸窮迫症候群を引き起こした患者など、COVID-19のさまざまな重症度段階の患者に対して行った、血液や気管支肺胞洗浄液に存在する免疫細胞の表現型解析や可溶性因子の評価を含む免疫応答の縦断的解析の結果について示す。可溶性C5aのレベルはCOVID-19の重症度に比例して上昇し、血液や肺の骨髄系細胞でC5aR1受容体の発現レベルが高いことが見いだされ、これは、急性呼吸窮迫症候群の病態生理においてC5a–C5aR1軸が重要であることを支持している。抗C5aR1治療用モノクローナル抗体は、C5aを介したヒト骨髄系細胞の動員と活性化を防ぎ、ヒトC5aR1ノックインマウスにおける急性肺障害を抑制した。これらの結果は、C5a–C5aR1軸の阻害が、障害を受けた器官で骨髄系細胞の浸潤を制限し、COVID-19患者における急性呼吸窮迫症候群に関連した過剰な肺炎症や血管内皮炎を防ぐするために使用できることを示唆している。

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