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コロナウイルス:イヌのSARS-CoV-2感染

Nature 586, 7831 doi: 10.1038/s41586-020-2334-5

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は2019年12月に武漢で初めて検出され、これによって新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が引き起こされた。2003年には、このウイルスと近縁のSARS-CoVが、飼いネコおよび飼いイヌで検出されている。しかし、SARS-CoV-2に対する、家庭のペット哺乳動物の罹病性についてはほとんど分かっていない。今回我々は、逆転写PCR、血清検査、ウイルスゲノムの塩基配列解読、ウイルスの分離を用いて、香港のCOVID-19感染症例の世帯で飼育されていたイヌ15頭のうち2頭がSARS-CoV-2に感染していたことを明らかにする。去勢した雄のポメラニアン(17歳)では、13日間にわたって採取した鼻腔スワブ5点からSARS-CoV-2のRNAが検出された。雄のジャーマンシェパード(2.5歳)は2回にわたってSARS-CoV-2 RNA陽性であり、ウイルスが鼻腔スワブおよび口腔スワブから分離された。プラーク減少中和アッセイにより、両個体で抗体反応が検出された。これら2頭から得られたウイルスの遺伝子塩基配列は、各飼育世帯のヒト症例から検出されたウイルスと同一のものであった。2頭は共に、隔離中は無症状であった。この証拠は、これらがヒトから動物へのSARS-CoV-2伝播の実例であることを示唆している。ウイルスが感染したイヌから別の動物に伝播したり、ヒトに再び伝播したりすることがあるのかどうかは不明である。

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