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コロナウイルス:大規模な化合物リポジショニングによるSARS-CoV-2抗ウイルス薬の発見

Nature 586, 7827 doi: 10.1038/s41586-020-2577-1

2019年の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の出現により、重症肺炎様疾患である新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が引き起こされ、現在も進行中である。ワクチンの開発には最短でも12〜18か月かかると思われ、新規抗ウイルス治療薬の認可のための典型的なタイムラインは10年を超える場合がある。そのため、既存薬のリポジショニング(repurposing)によって、新たなCOVID-19治療法の市場への展開を大幅に加速できる可能性がある。今回我々は、臨床段階や米国食品医薬品局(FDA)承認済みの約1万2000の低分子を含む薬剤ライブラリーをプロファイルし、COVID-19の候補治療薬を特定した。我々は、SARS-CoV-2のウイルス複製を阻害する100分子を特定し、そのうち21の薬剤は用量反応関係を示すことを報告する。中でも、13の薬剤(PIKfyveキナーゼ阻害剤であるアピリモドや、システインプロテアーゼ阻害剤であるMDL-28170、Z LVG CHN2、VBY-825、ONO 5334が含まれる)は、患者においておそらく達成可能な治療用量に相応する有効濃度を有することが分かった。特に、MDL-28170、ONO 5334およびアピリモドは、誘導多能性幹細胞由来のヒト肺細胞様の細胞においてウイルス複製を抑制することが明らかとなり、アピリモドはヒト初代肺外植片モデルでも抗ウイルス効果を示した。本研究で特定されたこれらの分子の多くはすでに臨床に進んでおり、薬理学的プロファイルやヒト安全性プロファイルが明らかにされているため、COVID-19の治療に対するこれらの薬剤の前臨床や臨床での評価を加速させられると考えられる。

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