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発生生物学:器官形成および腫瘍形成のための、適応性のある血行力学的内皮細胞

Nature 585, 7825 doi: 10.1038/s41586-020-2712-z

内皮細胞は組織特異的な特徴を取り入れ、器官の発生や再生を指示している。しかし、培養された成体の内皮細胞では、この適応能が失われ、器官型内皮細胞として組織に血管を新生しない。今回我々は、ラミニン、エンタクチン、IV型コラーゲンの混合物で構成される無血清三次元マトリックス(LECマトリックス)内で培養したヒト成熟内皮細胞において、胚限定的なETV2(ETS variant transcription factor 2)を一過性に再活性化すると、これらの内皮細胞が適応性のある血管形成細胞に「リセット」され、灌流可能で可塑性のある血管網を形成することを示す。ETV2は、クロマチンリモデリングを介して、持続性のある管腔の形成を促進するRAP1の活性化など、小管形成経路を誘導した。バイオプリンティングによる足場の制約がない三次元マトリックスでは、この「リセット」された血管内皮細胞(R-VEC)は自己集合して、スケーラブルなマイクロ流体チャンバー内に安定で多層化された分岐のある血管ネットワークを形成し、これはヒトの血液を輸送できた。in vivoでは、マウスの皮下に移植されたR-VECは自己組織化により、周皮細胞に覆われた持続的な血管を形成した。これらの血管は宿主の血液循環に機能的に吻合して、長期間持続するパターン形成を示し、奇形や血管腫の証拠は見られなかった。R-VECは三次元共培養オルガノイド内の細胞と直接相互作用するため、organ-on-chip系に必要な、制限のある合成半透膜の必要性が取り除かれており、血管新生のための生理的プラットフォームとなる。我々はこれを「Organ-On-VascularNet」と名付けた。R-VECは、グルコース応答性インスリン分泌ヒト膵島における灌流、ラットの脱細胞化腸における血管新生、健康なあるいはがんのヒト大腸オルガノイドにおける樹枝状の血管の形成を可能にした。単一細胞RNA塩基配列解読およびエピジェネティックプロファイリングにより、R-VECが組織特異的にオルガノイドやテューモロイド(tumoroid)に、個別に適合および順応する適応性のある血管ニッチを確立することが実証された。我々のOrgan-On-VascularNetモデルは、内皮細胞の不均一性の決定要因を特定するための器官型内皮細胞と実質細胞の間のクロストークを解き明かす代謝、免疫学、生理化学の研究やスクリーニングを可能にし、また、治療としての器官修復や腫瘍標的化の進歩につながる可能性がある。

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