コロナウイルス:SARS-CoV-2に感染したアカゲザルにおけるレムデシビルの臨床効果
Nature 585, 7824 doi: 10.1038/s41586-020-2423-5
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する有効な治療法が緊急に必要とされている。多くの治験薬、承認薬、リポジショニング薬(repurposed drug)が有望な治療法として提案されている中で、動物モデルでの前臨床データは、in vivoで有効性のない薬剤を除外することにより、有効な治療の探索を導くことができる。レムデシビル(GS-5734)は、広範な抗ウイルス活性を持つヌクレオチド類似体のプロドラッグで、現在COVID-19を対象とする臨床試験が進められており、最近、米国食品医薬品局(FDA)から緊急使用許可を受けた。動物モデルでは、レムデシビルは中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)および重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)の感染に対して有効であった。in vitroでは、レムデシビルは重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の複製を阻害することが示されている。今回我々は、SARS-CoV-2感染のアカゲザルモデルにおいてレムデシビルの有効性を調べた。レムデシビルを投与したアカゲサルは、対照群のアカゲザルとは異なり、呼吸器疾患の兆候を示さず、初回投与後12時間後にX線写真で肺浸潤の低下を示し、気管支肺胞洗浄液中のウイルス力価が減少した。上気道からのウイルス排出は、レムデシビル投与によって減少しなかった。レムデシビルを投与したアカゲサルの剖検では、肺ウイルス量の減少と、肺損傷の軽減が見られた。このように、SARS-CoV-2に感染したアカゲザルにおいて、感染早期でのレムデシビル投与の開始は臨床効果をもたらした。アカゲザルモデルではCOVID-19患者の一部で観察される重症の疾患は見られないものの、我々のデータは、肺炎への進行を防ぐために、COVID-19患者に対するレムデシビル投与の早期開始を支持するものである。