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コロナウイルス:SARS-CoV-2を接種したアカゲザルにおける呼吸器疾患

Nature 585, 7824 doi: 10.1038/s41586-020-2324-7

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)により引き起こされ、その致死率(CFR)は約2%である。COVID-19のアウトブレイク(集団発生)は、2019年12月に中国の武漢で始まった。かつてない世界的な広がりを受けて、世界保健機関(WHO)は2020年3月11日にCOVID-19はパンデミック(世界的大流行)であると宣言した。ヒトにおけるCOVID-19のデータは着実に出ているが、SARS-CoV-2病原性のいくつかの側面は、試料採取や組織収集を繰り返し行うことのできる動物モデルでしか詳細に調べることができない。今回我々は、SARS-CoV-2がアカゲザルに呼吸器疾患を引き起こし、この病状は8〜16日間持続することを示す。肺のX線写真では、ヒトでのCOVID-19の特徴である肺浸潤が認められた。また、全てのサルの鼻や咽喉のスワブ(ぬぐい液)で、気管支肺胞洗浄液と同様に、高いウイルス量が検出された。その内の1個体では、直腸からの持続的なウイルス排出も観察された。まとめると、COVID-19のヒト症例の大部分で観察される中等度の病気が、アカゲザルにおいて再現された。COVID-19のアカゲザルモデルの確立は、この疾患の病原性に関する理解を深め、医療対策の開発や試験に役立つだろう。

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