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コロナウイルス:SARS-CoV-2スパイクタンパク質上の多数のエピトープに対する強力な中和抗体

Nature 584, 7821 doi: 10.1038/s41586-020-2571-7

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のパンデミック(世界的大流行)は継続中であり、人命と世界経済に甚大な被害をもたらしている。ウイルスを中和するモノクローナル抗体の発見や開発は、このコロナウイルスによる感染の治療あるいは予防策の1つとなると考えられる。今回我々は、SARS-CoV-2に感染し、重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院した5人の患者から、61種のSARS-CoV-2中和モノクローナル抗体を単離した。これらの中には真正のSARS-CoV-2をin vitroで強力に中和する抗体が19種含まれ、そのうちの9種は非常に高い効力を示し、50%ウイルス阻害濃度は0.7~9 ng ml−1だった。エピトープマッピングにより、これら19種の抗体は、受容体結合ドメイン(RBD)に対する抗体とN末端ドメイン(NTD)に対する抗体にほぼ二等分されることが分かり、ウイルススパイクの先端にあるこれらの領域の両方が免疫原性を持つことが示された。また、これらとは別の2種の強力な中和抗体は、スパイクの先端にある複数のドメインと重なる4つで一組のエピトープを認識した。RBDを標的とする1番目の抗体、NTDを標的とする2番目の抗体、2つの別々のRBDを橋渡しする3番目の抗体のクライオ電子顕微鏡法による再構築から、これらの抗体がスパイクの「全てのRBDが動作していない」閉じたコンホメーションを認識することが示された。これらのモノクローナル抗体のいくつかは、SARS-CoV-2に対する治療薬もしくは予防薬として臨床開発を行うための有望な候補である。

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