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コロナウイルス:SARS-CoV-2感染によって生じたヒト中和抗体

Nature 584, 7819 doi: 10.1038/s41586-020-2380-z

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)を原因とする新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)は、緊急の介入を要する世界的な健康上の緊急事態となっている。標的細胞へのSARS-CoV-2の侵入は、ウイルススパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)とその細胞受容体であるアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)との結合に依存する。今回我々は、SARS-CoV-2に感染した患者8人の単一B細胞に由来する、206種類のRBD特異的なモノクローナル抗体の単離と特性解析結果について報告する。我々は、SARS-CoV-2を強力に中和する抗体を複数特定した。この活性はRBDへの結合に対するACE2との競合と相関する。意外にも、抗SARS-CoV-2抗体や感染者の血漿は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)や中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)のRBDとは交差反応しなかったが、それらの三量体スパイクタンパク質とはかなりの血漿交差反応性を示した。RBDに結合した抗体の結晶構造の解析から、立体構造的な障害がウイルスのACE2への結合を妨げており、このためウイルスの侵入が阻害されることが明らかになった。これらの知見から、抗RBD抗体はその多くがウイルス種特異的な阻害因子であることが示唆される。今回特定された一連の抗体は、SARS-CoV-2に対する臨床介入法を開発するための候補となると考えられる。

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