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構造生物学:複製中のSAR-CoV-2ポリメラーゼの構造

Nature 584, 7819 doi: 10.1038/s41586-020-2368-8

新型コロナウイルスである重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、自身のゲノム複製と遺伝子の転写にRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)を使っている。今回我々は、SARS-CoV-2のRdRpについて、複製中の酵素を模倣した活性型のクライオ電子顕微鏡構造を示す。この構造は、ウイルスタンパク質であるnsp12(non-structural protein 12)、nsp8、nsp7、そしてRNA鋳型とそれから作られた二本鎖(2回転分を超える大きさ)からなる。nsp12の活性部位である裂け目はRNAの1つ目の回転部分に結合していて、保存された残基を使ってRdRp活性を仲介している。この裂け目の反対側には2つのnsp8が結合しており、これがRNAの2つ目の回転部分の位置を決めている。nsp8中にある長く伸長したヘリックスは、離れていくRNAに沿って突き出して、正電荷を持つ「滑り棒」を形成している。このような滑り棒により、RdRpがコロナウイルスの長いゲノムを複製するのに必要な、既知の連続処理能力が説明できる。今回の結果によって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬の1つであるレムデシビルのような物質が持つ抗ウイルス活性の基盤となる阻害機構の詳細な解析が可能となる。

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