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ゲノミクス:組織全体と単一細胞の分解能で見たマウス胚トランスクリプトームの変化

Nature 583, 7818 doi: 10.1038/s41586-020-2536-x

哺乳類の胚形成では、遺伝子発現の違いが、それぞれの組織・器官系のアイデンティティーと複雑性を徐々に作り上げていく。今回我々は、マウスの17の組織と器官から抽出した、胚発生の10.5日齢から出生までのポリA-RNAを系統的に定量化した。得られた発生トランスクリプトームは、動的な細胞分化、体軸、細胞増殖の遺伝子セットによって包括的に構造化されていて、それらはさらに個々のプロモーターの転写因子モチーフコード配列によって特徴付けられる。我々は、単一細胞RNA-seq(RNAを逆転写したcDNAの塩基配列解読)を用いて組織レベルのトランスクリプトームを分解したところ、神経発生と造血が遺伝子レベルと細胞レベルの両方で優位であり、この2つを合わせると遺伝子発現の差異の3分の1、特定された細胞タイプの40%以上を占めることが判明した。プロモーター配列モチーフをこれと対となるENCODEエピゲノムプロファイルと統合することにより、ニューロン発現クラスターの顕著なプロモーター脱抑制機構が明らかになった。この機構は、既知のリプレッサーと新規のリプレッサーによるものである。発生中の肢に焦点を合わせることで、単一細胞RNAデータから、計算上推定された細胞系譜関係を持つ前駆細胞状態と分化状態を含む25の細胞タイプ候補が特定された。我々は、単一細胞RNA-seqによって、細胞タイプの転写因子ネットワークと、それを補完するエンハンサーエレメント候補のセットを抽出し、組織全体のエピゲノムクロマチンデータから導かれた統合的シスエレメントのIDEASモデルを分解した。これらのENCODE参照データ、計算によるネットワーク構成要素、IDEASクロマチン分割は、対応するエピゲノム発生マトリックスと対になる情報資源であり、さらなるデータマイニングや統合研究のために公開されている。

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