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ウイルス学:合成ゲノミクスのプラットフォームを用いるSARS-CoV-2の迅速な再構築

Nature 582, 7813 doi: 10.1038/s41586-020-2294-9

逆遺伝学の手法は、ウイルスの発症機序やワクチン開発についての手掛かりを得るのに欠かせないものとなっている。大型RNAウイルスのゲノム、例えばコロナウイルスのゲノムなどは大腸菌(Escherichia coli)でのクローン作製や操作がやりにくいが、これはゲノムのサイズと時折見られる不安定性のためである。従って、RNAウイルスに使える別の迅速かつロバストな逆遺伝学的プラットフォームがあれば、研究に役立つだろう。今回我々は、コロナウイルス科(Coronaviridae)、フラビウイルス科(Flaviviridae)、ニューモウイルス科(Pneumoviridae)のウイルスなど、さまざまなRNAウイルスを遺伝的に再構築するための全機能を備えた、酵母をベースとする合成ゲノミクスプラットフォームを示す。ウイルス単離株、クローニングされたウイルスDNA、臨床試料あるいは合成DNAを用いて、ウイルスの部分ゲノム断片を作製し、次いでこれらの断片を出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)でTAR(transformation-associated recombination)クローニング法によってワンステップで再構成して、このゲノムを酵母人工染色体として維持した。続いてT7 RNAポリメラーゼを用いて、感染性RNAを生成させることで生存可能なウイルスを再構築した。このプラットフォームを用いることで、合成DNA断片を受け取ってからたった1週間で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の最近のパンデミック(世界的大流行)を引き起こした重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の化学合成ウイルスクローンを設計し、作製できた。今回報告した技術的進歩によって、アウトブレイクが起こっている間に、進化するRNAウイルスバリアントをリアルタイムで作製してその機能的な特徴を調べることができるので、新興ウイルスへの迅速な対応が容易になる。

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