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ヒト遺伝学:転写産物の発現に注目したアノテーションにより、まれなバリアントの解釈が改善される

Nature 581, 7809 doi: 10.1038/s41586-020-2329-2

患者や集団研究の試料におけるDNA塩基配列解読が加速した結果、ヒトの遺伝的多様性についての広範なカタログが作成されるようになったが、まれな遺伝的バリアントの解釈についてはいまだに問題がある。この難題の注目すべき例の1つは、一見健康な人においてさえも、遺伝子量感受性の疾患遺伝子に破壊的なバリアントが存在することである。今回我々は、gnomAD(Genome Aggregation Database)においてハプロ不全疾患遺伝子の予測される機能喪失(pLoF)バリアントを手作業でキュレーションすることにより、この矛盾の説明の1つがmRNAの選択的スプライシングに関係していることを示す。遺伝子のエキソンは、こうしたmRNAの選択的スプライシングによって異なるタイプの細胞においてさまざまなレベルで発現することができる。現在、エキソン発現についての情報をバリアントの解釈に系統的に組み込むアノテーションツールは存在しない。我々は、バリアントに対してアイソフォームの発現を定量化する「転写産物全体での発現の割合(proportion expression across transcripts)」として知られる転写産物レベルのアノテーション測定基準を開発した。我々はこの測定基準を、遺伝型組織発現(GTEx)プロジェクトの1万1706の組織試料を用いて計算し、機能の重要性の代理指標となる、進化的な保存の程度が低いエキソンと高いエキソンを区別できることを示す。発現を基盤とするアノテーションは、gnomADのハプロ不全疾患遺伝子に見られる誤ってアノテーションされたpLoFバリアントの22.8%を選択的に除外するが、同じ遺伝子の高信頼度の病原性バリアントは4%未満しか除外しないことが実証された。さらに、我々の発現フィルターを、自閉症スペクトラム障害や知的障害あるいは発達障害の患者のde novoバリアントの解析に適用したところ、弱く発現する領域のpLoFバリアントは同義バリアントと同様の効果量を持つが、高度に発現するエキソンのpLoFバリアントは症例の中で最も豊富に見られることが分かった。我々のアノテーションは迅速で順応性が高く、一般化可能であるため、どのようなバリアントファイルでもあらゆるアイソフォーム発現データセットでアノテーションでき、まれな疾患の遺伝学的診断、複合疾患におけるまれなバリアント量の解析、そしてRbG(recall-by-genotype)研究のバリアントのキュレーションおよび優先順位付けに役立つと考えられる。

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