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構造生物学:ACE2受容体と結合したSARS-CoV-2スパイクタンパク質受容体結合ドメインの構造
Nature 581, 7807 doi: 10.1038/s41586-020-2180-5
病原性の高い新型コロナウイルスであるSARS-CoV-2(severe acute respiratory syndrome coronavirus-2)は、2019年12月に中国湖北省武漢市で始まったアウトブレイク(集団発生)の原因であり、その流行は急速に中国全土、さらには世界各国へと広がった。今回我々は、感染の初期段階を原子レベルでより詳しく解明する目的で、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)について、細胞の受容体ACE2に結合した状態の結晶構造を決定した。SARS-CoV-2 RBDがACE2と結合する際の全体的な様式は、やはりACE2を細胞側受容体として用いるSARS-CoV RBDのそれとほとんど同じであった。構造解析によって、SARS-CoV-2 RBDがACE2と結合するのに不可欠なアミノ酸残基が明らかになった。その大半はSARS-CoV RBDでも高度に保存されているか、側鎖の特性が共通しているかのどちらかであった。SARS-CoV-2はSARSコロナウイルスやSARS関連コロナウイルスと同一の系統には入らないが、構造と配列のこのような類似性は、SARS-CoV-2とSARS-CoVのRBDが、ACE2と結合しやすくなるように収斂進化してきたことを示している。RBDを標的とする2種類のSARS-CoV抗体のエピトープについても、SARS-CoV-2 RBDとの結合についての解析が行われ、交差反応する抗体を見つけ出すためのこれからの研究につながる手掛かりが得られた。