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腫瘍遺伝学:がんにおけるRNA変化のゲノム基盤

Nature 578, 7793 doi: 10.1038/s41586-020-1970-0

がんのゲノムでは、体細胞変化によって転写産物に変化が生じることが多い。がんでは、過剰発現、スプライシング異常、遺伝子融合など、さまざまな形のRNA変化が報告されている。しかし、これらのRNA変化は患者や腫瘍の種類によって不均一であり、トランスクリプトームと全ゲノム塩基配列解読の両方が解析されている患者コホートが比較的小さいため、どのようなゲノム変化に起因するかを突き止めるのは困難である。本論文では、我々の知る限りこれまでで最も包括的な、がんに関連した遺伝子変化のカタログを提示する。これは、国際がんゲノムコンソーシアム(ICGC;International Cancer Genome Consortium)とがんゲノムアトラス(TCGA;The Cancer Genome Atlas)によるがん種横断的全ゲノム解析(PCAWG;Pan-Cancer Analysis of Whole Genomes)コンソーシアムのドナー1188人に由来する腫瘍トランスクリプトームの解析によって作製された。我々は、腫瘍と対応する全ゲノム塩基配列解読データを用いて、いくつかのカテゴリーのRNA変化を生殖細胞系列や体細胞のDNA変化と関連付け、確からしい遺伝学的機構を明らかにした。体細胞のコピー数変化が、個々の遺伝子発現と対立遺伝子特異的発現の全体に見られる変動の主要なドライバーであった。体細胞の一塩基バリアントとシスの遺伝子発現について649の有意な関連性のペアが特定され、そのうち68.4%には遺伝子両側の非コード領域との関連が含まれていた。また、体細胞変異と関連のある1900のスプライシング変化が見つかり、その中にはイントロン内のAlu配列近傍の変異による偽エキソン形成を引き起こすものがあった。さらに、遺伝子融合の82%は構造バリアントとの関連が見られ、「ブリッジ型」融合(2つの遺伝子間を第3のゲノム部位が橋渡しする融合)と名付けた新しいクラスのバリアントが75含まれていた。トランスクリプトーム変化のシグネチャーは、がんの種類によって異なり、DNA変異シグネチャーの多様性との関連が見られた。RNA変化をゲノムの観点から捉えた今回の包括的知見は、がんに機能的な関わりを持つ遺伝子や機構の特定に利用できる優れた情報資源を提供するものである。

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