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加速器物理学:ミューオンイオン化冷却実証実験による冷却の実証

Nature 578, 7793 doi: 10.1038/s41586-020-1958-9

電子、陽子、イオンの加速ビームを使うことで、科学のほぼ全ての分野の発展が促進されてきた。しかし、品質が同等の高エネルギーミューオンビームは、まだ実現されていない。ミューオンビームは、陽子ビームと標的の相互作用によって生成されるパイオンの崩壊を通して生成できる。そうした「三次的」なビームの輝度は、電子、陽子、イオンを加速して生成されるビームのものよりはるかに低い。最先端の電子加速器、陽子加速器、イオン加速器によって生成されるビームに匹敵する、高輝度のミューオンビームが実現されれば、極めて高いエネルギーでのレプトン–反レプトン衝突の研究が促進され、特徴が明確なニュートリノビームが得られる可能性がある。そうしたミューオンビームは、ミューオンビームの輝度を高めるために提案されているイオン化冷却を使うことで実現できる可能性がある。今回我々は、イオン化冷却を実現し、ミューオンビームが吸収体を通過した後の低振幅ミューオン数の増大と、対応する位相空間密度の上昇の観測によってイオン化冷却が確かめられたことを報告する。このイオン化冷却システムのシミュレーションで得られた性能は測定データと一致しており、これによって冷却過程を繰り返して大きな冷却効果を生み出すイオン化冷却チャネルの設計の妥当性が確認された。今回の結果は、大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の限界を超えるエネルギースケールでの現象を調べるのに必要なミューオンビーム品質の、LHCと同等かより小さな設置面積の施設での実現へ向けた重要な一歩である。

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