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腫瘍遺伝学:ヒトのがんにおける変異シグネチャーのレパートリー

Nature 578, 7793 doi: 10.1038/s41586-020-1943-3

がんゲノムの体細胞変異は、それぞれが特徴的な変異シグネチャーを生じる複数の変異過程によって引き起こされる。今回我々は、国際がんゲノムコンソーシアム(ICGC;International Cancer Genome Consortium)およびがんゲノムアトラス(TCGA;The Cancer Genome Atlas)のがん種横断的全ゲノム解析(PCAWG;Pan-Cancer Analysis of Whole Genomes)コンソーシアムの一環として、ほとんどのがん種を網羅する4645例の全ゲノム解読配列および1万9184例の全エキソーム解読配列から得られた8472万9690個の体細胞変異データを用いて、変異シグネチャーの特徴を評価した。解析の結果、我々は一塩基置換変異シグネチャーを49個、二塩基置換変異シグネチャーを11個、多重塩基置換変異シグネチャーを4個、そして小規模の挿入欠失変異シグネチャーを17個同定した。今回の解析対象データは過去の解析と比較して極めてサイズが大きく、これによって新たな変異シグネチャーの発見や重複していた変異シグネチャーの分離に加えて、別々ではあるが互いに関連するDNA損傷、修復ならびに複製の機構をそれぞれ代表すると考えられる要素に変異シグネチャーを分解することができた。個々のがんゲノムに見られる体細胞変異カタログに対する各変異シグネチャーの寄与度を評価することにより、変異シグネチャーと外因性または内因性発がん要因への曝露ならびにDNA維持過程の異常との関係が明らかになった。しかし、多くの変異シグネチャーは原因が不明である。今回の解析は、ヒトがんの発生に寄与する変異過程のレパートリーに関する系統的な展望を提供するものである。

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