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腫瘍遺伝学:がん2658例の進化史

Nature 578, 7793 doi: 10.1038/s41586-019-1907-7

がんは体細胞進化の過程を経て発生する。単一生検からの塩基配列解読データはこの過程のスナップショットを表しており、特定のゲノム異常が生じたタイミングや変異過程の影響の変化を明らかにできる。今回我々は、国際がんゲノムコンソーシアム(ICGC;International Cancer Genome Consortium)とがんゲノムアトラス(TCGA;The Cancer Genome Atlas)によるがん種横断的全ゲノム解析(PCAWG;Pan-Cancer Analysis of Whole Genomes)コンソーシアムの一環として、2658例のがんの全ゲノム塩基配列解読解析から、38種類のがんに関して、その生活史、ならびに変異過程とドライバー変異配列の進化を再構築した。初期の発がんは、限られたドライバー遺伝子群の変異や特定のコピー数増加を特徴としており、グリオブラストーマ(神経膠芽腫)の7番染色体トリソミーや髄芽腫の17q同腕染色体はその例である。試料の40%では、腫瘍進化の過程全体で変異のスペクトルが大きく変化していた。段階が進むと、ドライバー遺伝子の4倍近い多様化とゲノム不安定性の増大が特徴となる。コピー数変化は有糸分裂クライシス(mitotic crisis)で起こる場合が多く、同時に染色体セグメントの増加を引き起こすことが分かった。タイミングの解析では、ドライバー変異は、数十年とまではいかなくとも、診断よりも数年前に起きている場合が多いことが示唆された。まとめると今回の結果は、がんの進化的軌跡を明らかにしており、がんの早期発見の機会を明確に示している。

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