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神経科学:ニッチの硬さが中枢神経系前駆細胞の老化の根底にある

Nature 573, 7772 doi: 10.1038/s41586-019-1484-9

加齢に従って成体幹細胞集団や前駆細胞集団の機能が失われることで、組織再生の低下が起こる。その一例が、オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)として知られる、中枢神経系(CNS)に広く豊富に存在する多能性幹細胞で見られる再生能の低下である。この機能喪失の原因候補として、従来あまり注目されてこなかったのが幹細胞の「ニッチ」、つまり化学的・物理的なシグナルを含む細胞外からの一連の合図である。今回我々は、加齢に従ってOPC微小環境が硬化し、この機械的変化がOPCの加齢関連機能喪失を引き起こすのに十分であることを示す。若齢脳の硬さを模した生物由来の足場や合成足場を用い、それらの上で老化脳から単離したOPCを培養したところ、分子的にも機能的にも若返りが起きることが見いだされた。機械的シグナル伝達を遮断すると、OPCの増殖率と分化率は増大した。我々は、OPCで機械的シグナルを仲介する主要メディエーターが、機械刺激受容イオンチャネルのPIEZO1であることを突き止めた。PIEZO1を阻害すると、in vivoで機械的シグナル伝達が無効化され、OPCは老化CNS内で活性を維持できる。PIEZO1は、CNS発生中の細胞数の調節にも重要なことが分かった。このように、組織の硬さがOPCの加齢における重要な調節因子であることが分かり、加齢とともに成体幹細胞や前駆細胞の機能が変化する仕組みについて、新たな洞察が得られた。今回の知見は、再生療法の開発だけでなく、加齢プロセス自体の理解にも重要である可能性がある。

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