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神経障害:多発性硬化症でのオリゴデンドロサイトの発生動態

Nature 566, 7745 doi: 10.1038/s41586-018-0842-3

オリゴデンドロサイトは、特殊化した細胞膜の層で中枢神経系の神経繊維を包み込み、ミエリン鞘を形成している。多発性硬化症ではミエリンが免疫系により破壊される。だが、ミエリンは再生すると考えられており、神経機能の回復は可能である。脱髄性疾患の動物モデルでは、ミエリンは新たに生じたオリゴデンドロサイトにより再生され、生き残った成熟オリゴデンドロサイトはこの過程に関与しないように見える。オリゴデンドロサイトの発生と適応的なミエリン形成の動態は、齧歯類とヒトの間で大きく異なることを考えれば、実験動物モデルが多発性硬化症の状態をどの程度再現しているのかははっきりしない。今回我々は、核実験由来の14CのゲノムDNA中への取り込みを測定することにより、多発性硬化症患者でのオリゴデンドロサイトの発生動態を評価した。非常に進行の速い多発性硬化症患者の一部では、新しいオリゴデンドロサイトの発生が、正常なように見える白質で数倍に増加していたが、大部分の患者では増加しておらず、これは、オリゴデンドロサイトの大幅な発生増加を引き起こす生得的な能力がほとんどの患者で失われていることを示している。shadow plaque(ミエリン化が薄い病変で、再ミエリン化された領域と考えられている)内のオリゴデンドロサイトは、多発性硬化症患者では古いものだった。shadow plaque内に新たなオリゴデンドロサイトが存在しないことから、多発性硬化症では病変部の再ミエリン化は一過的であるか全く起こらないと考えられるが、あるいは新しくない既存のオリゴデンドロサイトによってミエリンが再生されるのかもしれない。今回の結果は、多発性硬化症でのオリゴデンドロサイト発生の予想外の動態を示しており、これは現行の治療法の使い方や新たな治療法の開発に役立つだろう。

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