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核物理学:88Zrの驚くべき大きさの中性子捕獲断面積

Nature 565, 7739 doi: 10.1038/s41586-018-0838-z

原子核が中性子を吸収する確率、すなわち中性子捕獲断面積は、星の元素合成、原子炉性能、核医学、防衛への応用を含む原子核科学の多くの分野で重要である。中性子捕獲断面積は安定原子核の大半で測定されているが、放射性同位体での測定結果は少なく、統計モデルによる予測では不確かさが大きいことが多い。放射性核88Zrの中性子誘起反応の核データは、核安全保障の診断時に重要であるにもかかわらず、ほとんど存在しない。今回我々は、原子炉の強い中性子束に88Zrを曝露することで、88Zrの熱中性子捕獲断面積を86万1000 ± 6万9000バーン(不確かさは1σ)と決定した。この値は、10バーンという理論予測値より5桁大きい。この熱中性子捕獲断面積は、これまで測定された中で2番目に大きく、過去70年間でこれに匹敵する大きさの断面積は他に発見されていない。断面積が105バーンより大きいことが知られている原子核は他に、初期原子炉のポイズンとして最初に発見された核分裂生成物の135Xe(2.6 × 106バーン)と、検出器材料、燃焼可能な原子炉ポイズン、有望な中性子捕獲療法の薬剤として用いられている157Gd(2.5 × 105バーン)しかない。88Zr中性子捕獲の場合、標的核と生成核(89Zr)は共に放射性で、崩壊の際に強いγ線を放出するため、ごく微量のこうした放射性核種の高感度な検出が可能になる。今回の結果は、新しい原子核科学施設が稼働すれば、放射性同位体を用いたさらなる測定が可能になり、さらに意外な結果が発見され、我々の中性子捕獲反応の理解に広範な影響を及ぼす可能性があることを示唆している。

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