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微生物学:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌は細胞壁の糖鎖修飾を変化させて免疫を回避する

Nature 563, 7733 doi: 10.1038/s41586-018-0730-x

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、治療が難しく、しばしば致死的となるヒト感染症の原因になることが多い。ヒトの大部分は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対する抗体を持っているが、これらの抗体の性質は非常にばらつきが大きく、免疫不全患者では防御効果が見られないことが多い。また、これまでのワクチン開発プログラムは成功していない。黄色ブドウ球菌に対するヒト抗体の大部分は、細胞壁テイコ酸(WTA)を標的としている。WTAは、リビトールリン酸(RboP)からなる表面ポリマーでN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)によって修飾されている。MRSAの免疫回避能が、WTA関連エピトープなどの主要な表面エピトープのばらつきから生じるのかどうかは現在のところ分かっていない。今回我々は、広く知られている医療関連MRSAクローンのCC5と、家畜関連MRSAクローンのCC398のかなりの部分が、別のWTAグリコシルトランスフェラーゼをコードするプロファージを含んでいることを示す。コードされている酵素のTarPは、WTA RboPのヒドロキシル基の1つにGlcNAcを転移させるが、このヒドロキシル基は標準酵素TarSによる転移を受けるものとは異なっているため、免疫認識に重大な影響が生じる。マウスでは、TarPにより糖鎖修飾を受けたWTAが誘導する免疫グロブリンGのレベルは、TarSにより修飾されたWTAの場合の7.5分の1~40分の1だった。これと一致して、ヒト血清では、TarPにより修飾されたWTAに対する抗体のレベルは常に低かった。特に、TarSで修飾されたWTAで免疫したマウスは、tarPを発現するMRSAによる感染が防御されず、TarPは黄色ブドウ球菌の宿主防御回避能力に重要であることが示された。WTAの構成要素とウリジン二リン酸GlcNAc(UDP-GlcNAc)に結合したTarPの高分解能構造解析から、RboP糖鎖修飾が変化する機構が説明され、TarPを標的とする阻害のための枠組みが作られた。我々の研究は、主な糖抗原であるWTAの免疫原性を防止することに基づいた黄色ブドウ球菌の免疫回避戦略を明らかにしている。これらの結果は、黄色ブドウ球菌の変化しないワクチン用抗原を突き止めるのに役立ち、また、MRSAをヒト宿主の防御態勢に感受性とする新しい戦略としてのTarP阻害剤の開発につながるだろう。

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