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構造生物学:エボラウイルス核タンパク質–RNA複合体の3.6 Å分解能でのクライオ電子顕微鏡構造

Nature 563, 7729 doi: 10.1038/s41586-018-0630-0

ヒトやヒト以外の霊長類に高い致死率の出血熱を引き起こす病原体であるエボラウイルスは、線状非分節マイナス一本鎖のゲノムRNAを持つウイルスグループであるモノネガウイルス目フィロウイルス科に属する。エンベロープを有するひも状のウイルス粒子内には、らせん構造の核タンパク質–RNA複合体、VP24、VP30、VP35およびウイルスポリメラーゼからなるヌクレオカプシドが取り込まれている。核タンパク質–RNA複合体は、ヌクレオカプシド形成時に足場として働く他、RNAを凝縮してウイルス粒子へと取り込むことによってゲノムRNAの転写・複製における鋳型として機能している。核タンパク質とRNAの結合と核タンパク質の多量体化は協働的であって、別々には起こりにくい。クライオ(極低温)電子線トモグラフィー法を用いた最近の研究によって、ヌクレオカプシドコアの全体構造が明らかになったが、その高分解能構造については報告がなかった。本研究では、エボラウイルスの組換え核タンパク質–RNA複合体を哺乳類細胞で発現させ、化学固定することなく精製した後、単粒子クライオ電子顕微鏡法を用いて得られた近原子分解能での構造を報告する。この構造から、エボラウイルスのヌクレオカプシドコアによるウイルスゲノムの取り込み、核タンパク質とRNAとの塩基配列非依存的な結合、核タンパク質のRNA結合前後における構造変化の動態が明らかになった。また、サブユニットが多量体化する際の核タンパク質N末端ドメインの役割が明らかになった他、らせん構造形成を担う疎水性相互作用および静電相互作用領域が同定された。さらに、複合体構造のサイズやらせん対称性は完全なウイルス粒子と一致しており、この複合体がヌクレオカプシドコアの持つ本来の構造を示していることが確かめられた。電子顕微鏡構造に基づいて構築した核タンパク質–RNA複合体の原子モデルは、ヌクレオカプシドの集合の機構解明につながる詳細な基盤となり、抗ウイルス薬開発の際の標的になり得る重要な構造領域を明らかにしている。

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