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神経科学:GPCRの天然のバリアントや改変による変異がC. elegansのDEET抵抗性を促進する

Nature 562, 7725 doi: 10.1038/s41586-018-0546-8

DEET(N,N-ジエチル-m-トルアミド)は、兵士を蚊媒介疾患から守る昆虫忌避剤のスクリーニングにおいて、1946年に米国農務省により特定された合成化学物質である。以来DEETは、世界で最も広く使用されている節足動物に対する忌避剤となり、サシバエ、ミツバチ、ダニ、ヤマヒルを含む、数百万年前に分岐し進化してきた多様な無脊椎動物に対して有効である。DEETは昆虫では嗅覚系に作用し、嗅覚受容体の共受容体であるOrcoを必要とするが、DEETが機能する正確な仕組みについてはまだ結論が出ていない。今回我々は、線虫の一種Caenorhabditis elegansがDEETに感受性であることを示し、この遺伝的に扱いやすい動物を用いてDEETの作用機構を調べたことを報告する。その結果、DEETは揮発性忌避剤ではなく、さまざまな誘引分子や忌避分子に対する走化性を選択的に妨げることが分かった。我々は、DEET抵抗性線虫での順遺伝学的スクリーニングにおいて、単一のGタンパク質共役受容体str-217をコードする遺伝子を特定し、これがADLニューロンと呼ばれるDEET応答性の1対の化学感覚ニューロンに発現していることを突き止めた。別の化学感覚ニューロンにstr-217を異所的に発現させるとDEETへの応答が引き起こされた。C. elegansの改変str-217変異体や、str-217を欠失させた野生型分離株は、DEET抵抗性になった。DEETは移動中の平均休止時間の増加を誘導して行動を妨げ得ることが分かり、このような休止の増加にはstr-217とADLニューロンの両方が必要であることが示された。さらに、ADLニューロンはDEETによって活性化され、また、ADLニューロンの光遺伝学的活性化により平均休止時間が増加することが実証された。これは、DEETが単なる忌避剤ではなく、多数の嗅覚経路を調節して行動応答をかく乱する分子であると提案する「かく乱物質(confusant)」仮説と一致している。我々の結果から、広くさまざまなタクソンにわたってDEETが有効である一貫した特徴が示唆された。つまりDEETは多数の化学感覚ニューロンに影響を及ぼし、嗅覚刺激と行動応答の間の対形成を破壊すると考えられる。

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