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高エネルギー物理学:陽子バンチのプラズマ航跡場における電子加速

Nature 561, 7723 doi: 10.1038/s41586-018-0485-4

高エネルギー粒子加速器は、基本粒子と、それらの相互作用を支配する力をより深く理解するのに極めて重要である。粒子のエネルギーを高くしたり、加速器のサイズを小さくしたりするには、新しい加速方式を開発する必要がある。プラズマ中の電子を励起して、強い電場(いわゆる「航跡場」)を生成するプラズマ航跡場加速は、そのような有望な加速技術の1つである。プラズマを横切る強力なレーザーパルスや電子バンチが、従来型の高周波加速器で実現される電場(1 m当たり約0.1 GV)を大幅に超える1 m当たり数十ギガボルト以上の電場を駆動できることが、実験によって示されている。しかし、レーザーパルスや電子バンチの蓄積エネルギーが低いため、粒子に非常に高いエネルギーを与えるには多数の加速段階が必要になる。陽子バンチは、航跡場を駆動して、電子を単一の加速段階で高エネルギーに加速できる可能性があるため、その使用は魅力的である。長く細い陽子バンチは、自己変調と呼ばれる過程を経るため使用できる。この過程は、バンチを縦方向に分裂させて高密度のマイクロバンチ列を生成するプラズマ相互作用で、これらのマイクロバンチが共鳴的に作用して大きな航跡場を生じる。CERNの先進航跡場(AWAKE)実験では、おのおのの陽子のエネルギーが400 GeVで、バンチの全エネルギーが19 kJになる高強度の陽子バンチを使って、長さ10 mのプラズマ中に航跡場を駆動している。次に、この航跡場へ電子バンチが注入される。本論文では、陽子駆動プラズマ航跡場加速の実証として、AWAKE実験において、最高2 GeVまで加速した電子の測定結果を示す。測定はさまざまなプラズマ条件下で行われ、加速には一貫性と信頼性があることが分かった。この方式には単一の加速段階で極めて高いエネルギーの電子バンチを生成する可能性があることから、今回の結果は、将来の高エネルギー粒子加速器の開発への重要な一歩になる。

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