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素粒子物理学:反水素の1S–2S遷移の特性評価

Nature 557, 7703 doi: 10.1038/s41586-018-0017-2

ディラックは1928年に、量子力学と特殊相対性理論を組み合わせた方程式を発表した。この方程式の負のエネルギー解は、当初考えられたように非物理的なものではなく、それまで観測も想像もされていなかった粒子、つまり反物質を表していた。反物質粒子の存在は、1932年のアンダーソンによる陽電子(つまり反電子)の発見によって確認されたが、反物質ではなく物質がビッグバンの後に残ったのはなぜなのかはまだ分かっていない。そのため、電荷–パリティ対称性や電荷–パリティ–時間対称性などの基本的な対称性の検証を含む反物質の実験的研究や、反ヘリウム原子核などの始原的な反物質の証拠の探索は、現代物理学の研究において最重要課題となっている。宇宙の進化や、量子物理学に対する我々の理解の歴史的進展において、水素原子は基本的な役割を果たしているため、その反物質である反水素原子は特に興味深い研究対象である。現在の標準モデルの物理学では、水素と反水素のエネルギー準位とスペクトル線は同じでなければならない。最近、反水素においてレーザーによって誘起される1S–2S遷移が観測された。本論文では、この遷移の超微細構造成分の1つを、磁気的にトラップされた反水素原子を用いて特性評価し、我々の装置中の水素で行ったモデル計算と比較した。その結果、スペクトル線の形状は水素に対して予測されるスペクトル線の形状と非常によく一致し、共鳴周波数は2.5 × 1015 Hz中約5 kHzまで水素の共鳴周波数と一致することが見いだされた。これは、前回の測定よりも2桁精度の高い2 × 10−12の相対精度で電荷–パリティ–時間不変性と一致し、2 × 10−20 GeVの絶対エネルギー感度に相当する。

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