Letter

ゲノミクス:ヤクシマランのゲノムとランの進化

Nature 549, 7672 doi: 10.1038/nature23897

顕花植物のおよそ10%を占めるラン科(Orchidaceae)の植物は、独特な形態の花をつけ、極めて多彩な生活様式を有し、地球上のほとんど全ての生息環境にうまく定着してきた。本論文では、ラン科の姉妹系統群の1つ、ヤクシマラン亜科(Apostasioideae)を構成する2つの属の一方であるヤクシマラン属のApostasia shenzhenicaの概要ゲノム塩基配列を報告する。この解析は、全ての現生ラン科植物の最も近い共通祖先のゲノムの量や構造を推測する手掛かりとなり、それらの起源と進化についての理解を深める助けになる。加えて、バニラ亜科(Vanilloideae)、アツモリソウ亜科(Cypripedioideae)、およびチドリソウ亜科(Orchidoideae)の各代表種についてのトランスクリプトームのデータと、セッコク亜科(Epidendroideae)の2種についての第3世代シーケンサーで決定した新たなゲノムデータを提示することで、ラン科の5つの亜科全てを網羅する。A. shenzhenicaには、全ゲノム重複が起こったことを示す明らかな証拠が見られ、この全ゲノム重複は全てのランに共通しており、分岐の直前に起きたことが分かった。A. shenzhenicaと他のランや被子植物との比較から、祖先的なランの遺伝子ツールキットの再現が可能になった。さらに、新しい遺伝子ファミリーが見つかり、ランの進化の過程で起こった遺伝子ファミリーの拡大や縮小、多種多様な発生過程を制御する複数のMADSボックス遺伝子クラス内での変化が明らかになった。我々の研究は、着生の進化のみならず、唇弁やずい柱の発生、花粉塊、胚乳を持たない種子などといった、ラン科植物の主要な革新の基盤となる遺伝的機構についても新たな洞察をもたらすとともに、ラン科の亜科間の関係を明らかにしており、また、被子植物内でのランの進化史の解明にも役立つ。

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