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化学:ジスプロソセニウムにおける60 Kでの分子の磁気ヒステリシス

Nature 548, 7668 doi: 10.1038/nature23447

ランタノイドは、分子スケールや原子スケールでの量子情報処理や高密度データ記憶への応用可能性を求めて広範に研究されてきた。実験的成果には、単一核スピンの読み込みと操作、ロバストなキュービットへの原子時計遷移の利用、さらに最近では単一原子における磁気データ記憶がある。単分子磁石は、分子起源の磁気ヒステリシス、すなわちデータ記憶の必要条件である磁気メモリー効果を示しており、これまで、ランタノイドの例において、最も高い温度での磁気ヒステリシス現象が確認されている。しかし単分子磁石の発見から約25年間で、非常に速い磁場掃引速度を用いることによって高いヒステリシス温度(例えば、200 Oe s−1で30K)が達成されたものの、約20 Oe s−1という一定の磁場掃引速度を用いたときのヒステリシス温度は、4 Kから約14 Kまでしか上昇していない。今回我々は、掃引速度22 Oe s−1において最高60 Kの温度で磁気ヒステリシスを示すヘキサ-tert-ブチルジスプロソセニウム錯体、[Dy(Cpttt)2][B(C6F5)4]について報告する。ここで、Cptttは{C5H2tBu3-1,2,4}、tBuはC(CH3)3である。我々は、この温度で、磁気的に希釈した試料において持続する、緩和ダイナミクスの明確な変化を観察した。これは、ヒステリシスの起源が、ジスプロソセニウムに特有の金属–配位子局在振動モードであることを示唆している。スピンダイナミクスのab initio計算によって、高温での磁気緩和は局在分子振動に起因することが示された。こうした結果は、賢明な分子設計を行えば、液体窒素温度を超える温度で単分子磁気データ記憶が可能になるはずであることを示している。

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