Letter

素粒子物理学:反水素の超微細スペクトルの観測

Nature 548, 7665 doi: 10.1038/nature23446

ラビたちによる水素原子の超微細構造の観測と、ゼロ磁場での基底状態の分裂の7 × 10−13レベルでの測定は、20世紀半ばの物理学の重要な成果である。また、これらの成果をもたらした研究によって、電子の異常磁気モーメントの初の証拠が得られ、シュウィンガーの相対論的量子電磁力学が触発され、現代のナビゲーションシステム、地球測位システム、超長基線電波干渉システムの重要な要素である水素メーザーが実現された。ALPHAコラボレーションによるCERNの反陽子減速器(Antiproton Decelerator)での研究は、こうした探究を反物質の領域へと拡張している。最近、水素の反物質である反水素の超微細構造の研究を可能にする手段が開発された。そうした研究の目標は、水素と反水素という原型的な一対の原子の間に存在し得るあらゆる違いを探索することであり、それによって、場の量子論構築の基礎となっている基本原理を検証することである。反水素原子の磁場捕捉によって、電磁相互作用と、反物質に特化した検出技術を組み合わせることで反水素を研究する手段が得られる。今回我々は、制御された周波数範囲にわたって反水素の応答を調べたマイクロ波分光実験の結果を報告する。得られたデータから、はっきり区別できる2つの許容遷移の特徴が明らかになり、磁場に依存しない超微細分裂の直接測定結果が得られた。我々は、194個の原子を検出した一連の試行から、分裂を1420.4 ± 0.5 MHzと決定した。この値は、4 × 10−4レベルで水素原子における予想と一致している。今回の反水素原子における量子遷移の詳細挙動の観測結果は、反物質におけるCPT(荷電共役変換、空間反転、時間反転)対称性などの基本対称性の検証例となり、今回開発した手法によってそうした検証のさらなる精度向上が可能になる。

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