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進化学:低温に適応した珪藻Fragilariopsis cylindrusの進化ゲノミクス

Nature 541, 7638 doi: 10.1038/nature20803

南大洋には多様で生産的な生物群集が存在する。この環境では、溶存鉄の濃度が低くて光や温度、海氷域の季節変動が大きいために光合成が限定されており、単細胞性の真核生物である珪藻類が主要な一次生産者となっている。珪藻類が、こうした極限環境にどのように適応してきたのかはよく分かっていない。今回我々は、温暖な環境に生息する珪藻類との比較に基づき、南大洋に生息する低温に適応した珪藻Fragilariopsis cylindrusのゲノム進化について得られた知見を示す。二倍体であるF. cylindrusのゲノムの約24.7%(全ゲノムサイズ61.1メガ塩基に対して15.1メガ塩基分)は、非常に分岐的な対立遺伝子を持つ遺伝子座で構成されていることが分かった。これらの分岐的な対立遺伝子は、暗黒下や低い鉄濃度、凍結、温度上昇、CO2濃度の増加などのさまざまな環境条件で特異的に発現していた。また、非同義ヌクレオチド置換と同義ヌクレオチド置換の比が最大となる対立遺伝子では、条件依存的な発現が最も顕著であることから、多様化選択と対立遺伝子の分化との間の相関が示唆された。分岐的な対立遺伝子は、南大洋における環境変動への適応に関係している可能性がある。

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