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ゲノミクス:セイヨウトネリコのゲノム塩基配列と遺伝的多様性

Nature 541, 7636 doi: 10.1038/nature20786

トネリコ(モクセイ科トネリコ属)は北半球全域に広く分布しているが、ヨーロッパでは子嚢菌の一種Hymenoscyphus fraxineusによるトネリコ立ち枯れ病(ash dieback)によって、また北米では植食性甲虫のアオナガタマムシ(Agrilus planipennis)によって深刻な被害を受けている。今回我々は、英国グロスタシャー州に自生するヘテロ接合性の低いセイヨウトネリコ(Fraxinus excelsior)のゲノム塩基配列解読を行い、3万8852のタンパク質コード遺伝子の注釈付けをした。他の10種の植物とゲノムを比較したところ、これらの遺伝子のうちの25%がトネリコ特有の遺伝子のようである。パラログ遺伝子の解析からは、オリーブ(Olea europaea、モクセイ科)との間で共有される全ゲノム重複が示唆された。またヨーロッパ各地に由来するセイヨウトネリコ37個体の塩基配列解読も行ったところ、有効集団サイズの長期間にわたると考えられる減少の証拠が見つかった。我々の参照配列を用いて、関連トランスクリプトームデータの再解析を行い、トネリコ立ち枯れ病に対する感受性低下の改良されたマーカーを得ることができた。英国の集団でのこれらのマーカーの調査から、トネリコ立ち枯れ病に対する感受性の低下は、デンマークより英国でより広がっている可能性が示唆される。我々はさらに、H. fraxineusに対するセイヨウトネリコの感受性は、各個体内のイリドイド配糖体のレベルに関連しているという証拠も示す。非モデル生物で新たに発生した健全性への脅威に対応するこの迅速で統合された学際的な研究は、流行病の緩和への道を開くものである。

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