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分子生物学:複製–転写の衝突によって誘発される変異の性質

Nature 535, 7610 doi: 10.1038/nature18316

DNA複製装置と転写装置は同じ鋳型DNAを共に利用するため、方向が同じだと追突し、逆方向だと正面衝突する可能性がある。こうした複製–転写の衝突は、複製フォークの停止や転写の早期終結、DNA切断、ゲノムの完全性を損なう組換え中間体生成を引き起こす恐れがある。衝突は変異を誘発する可能性もあり、そうして生じた変異は遺伝性疾患や進化の大きな要因となる。しかし、衝突が誘発する変異の性質やその発生機構はほとんど解明されていない。今回我々は、活発に分裂中の細菌で起こる複製–転写の衝突の遺伝学的影響が、2種類の変異群に分けられることを明らかにした。1つは重複/欠失、もう1つはプロモーター内の塩基置換である。どちらの種類の変異も非常に有害だが、すでに十分な特徴解析がなされているコード配列内の塩基置換とは異なっている。重複/欠失はおそらく、衝突が引き金となって複製が止まってしまうために生じたもので、その分布パターンは、複製フォークが転写単位に進入して最初に転写複合体に出会う位置とよく一致している。一方、プロモーター内の塩基置換は大半が正面衝突によるもので、プロモーターでよく保存されていて細菌の主要なσ因子によって認識されるヌクレオチドの所で起こることが多い。この置換は、複製の正面衝突によって転写開始が乱されるために、開いたプロモーター複合体の鋳型鎖上でアデニンの脱アミノ反応が起こることによって生じる。このように、複製–転写の衝突は、コード配列内だけでなく遺伝子調節エレメント内においても、複製と転写が互いに拮抗することによって異なる種類の変異を誘発すると考えられる。

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