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ウイルス学:軟口蓋は伝染性インフルエンザウイルスの適応に重要な部位である

Nature 526, 7571 doi: 10.1038/nature15379

A型インフルエンザウイルスは、限られた地域での季節性流行や散発性の世界的大流行(パンデミック)を引き起こすことで、公衆衛生にとって大きな脅威となっている。インフルエンザウイルスが疫学的な意味で「成功」を収めているのは、ヒトからヒトへの空気伝播によるものである。しかしながら、A型インフルエンザウイルスの空気伝播を支配するウイルス特性は複雑である。A型インフルエンザウイルスの感染は、ウイルスヘマグルチニン(HA)が細胞表面の糖タンパク質の末端に付加されたα2,3もしくはα2,6シアル酸へ結合することを介して起こる。ヒトA型インフルエンザウイルスは、α2,6結合シアル酸に選択的に結合するが、鳥A型インフルエンザウイルスは気道上皮細胞上の複合型グリカンのα2,3結合シアル酸に結合する。フェレットでは、歴史的に見ると、α2,3結合シアル酸に選択的に結合するA型インフルエンザウイルスの経気的伝播の効率はよくなかった。今回我々は、2009年インフルエンザパンデミックH1N1(H1N1pdm)ウイルス(A/California/07/2009)に遺伝学的操作を加えてα2,3結合シアル酸に選択的に結合するようにしたウイルスで、効率の良い空気伝播を観察した。空気伝播は、α2,3結合シアル酸結合能を失うことなく、長鎖α2,6結合シアル酸への結合を可能にする変化が単一のHA部位に生じたウイルスの迅速な選択と関連して起こった。このような伝染性ウイルスは、実験的に感染を起こさせたフェレットで、感染後24時間以内に出現し、他の組織に比べて軟口蓋に著しく多く存在していた。軟口蓋は、鼻咽頭表面中で長鎖α2,6結合シアル酸が多数を占める部位である。長鎖α2,6結合シアル酸が、フェレット、ブタおよびヒトの軟口蓋で保存されていることは注目に値する。この1種類のウイルスについて機能喪失法を用い、インフルエンザの動物モデルで通常はサンプル採取されない組織であるフェレット軟口蓋で、ヒト受容体(α2,6結合シアル酸)に選択性を持つ伝染性A型インフルエンザウイルスが迅速に選択されることを、我々は実証した。

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