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超伝導:硫化水素系における高圧かつ203ケルビンでの従来型の超伝導

Nature 525, 7567 doi: 10.1038/nature14964

超伝導体は、超伝導転移温度Tc以下の温度で抵抗なしに電気を伝える物質である。これまでに達成された最高のTcは銅酸化物系で得られており、大気圧で133 K、高圧で164 Kである。こうした物質は従来型の超伝導体ではなく、その超伝導の性質はまだ完全には理解されていないため、この方法でより高い転移温度を実現できる見込みは定かではない。対照的に、従来型の超伝導に関するバーディーン・クーパー・シュリーファー理論によって、高いTcを実現する指針が得られる。これには、理論的な上限がなく、高周波数フォノン、強い電子–フォノン結合、高い状態密度の有利な組み合わせがあれば十分である。水素原子によって、必要な高周波フォノンモードと強い電子–フォノン結合が得られるため、原理的には、金属水素や水素が支配的な共有結合化合物でこうした条件が満たされる。さまざまな計算によって、この考えが裏付けられ、多数の水素化物に対して50~235 Kの範囲の転移温度が予測されているが、実験的には17 Kというさほど高くないTcしか観測されていない。今回我々は、Tcが80 Kであると予測されている硫化水素を調べた。その結果、圧力約90ギガパスカルでこの系が金属に変化することが分かった。冷却すると、抵抗率が急激に低下してゼロになり、磁場をかけると転移温度が低くなるという超伝導の特徴が見られ、磁化率測定によってTcが203 Kであることが確かめられた。さらに、硫化重水素における明瞭なTcの同位体シフトは、バーディーン・クーパー・シュリーファーのシナリオと一致する超伝導の電子–フォノン機構を示している。この系で高温超伝導を起こす相は、おそらくH3Sであり、圧力下でH2Sが分解されて形成されている可能性が高いと考えられる。こうした知見は、他の水素系物質において室温超伝導を実現する可能性に期待を抱かせるものである。

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