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寄生虫学:下痢症を引き起こす病原体であるCryptosporidium parvumの遺伝学的改変

Nature 523, 7561 doi: 10.1038/nature14651

若齢小児で見られる重症の下痢の原因を世界的に調べた最近の研究により、寄生性原虫のCryptosporidiumが、下痢症の病原体としてロタウイルスに次いで2番目に重要であることが突き止められた。下痢症は小児の全死亡率の10.5%の原因であると推定されている。Cryptosporidiumはまた、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)によるエイズに罹患している場合や臓器移植の場合には日和見病原体となる。この原虫の感染に対するワクチンは存在せず、承認された薬剤は1つだけで、これは栄養失調の小児や免疫不全症患者などの危機的状況にある場合には効果がない。クリプトスポリジウム症に対する薬剤やワクチンの開発は、この寄生虫が扱いにくく、連続培養系、簡易動物モデル、適用できる分子遺伝学的手段などがないことで制限されてきた。本論文では、この重要なヒト病原体を遺伝学的に改変するための実験的枠組みについて報告する。我々は、組織培養でC. parvumのスポロゾイトに対してトランスフェクションを行う方法を確立し、最適化した。さらに、安定したトランスジェニック原虫を単離するために、スポロゾイトが直接腸に送達されるマウスモデル、CryptosporidiumのCRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeat)/Cas9系とアミノグリコシド抵抗性によるin vivo選抜系を開発した。我々はin vitroおよびin vivoでの薬剤スクリーニングに適したレポーター寄生虫を作製し、遺伝子ノックアウトによって薬剤感受性の基盤を推定した。この寄生虫の遺伝学的操作が可能になれば、Cryptosporidium研究に変革を起こすと考えられる。遺伝学的レポーターは、疾患、治癒および予防に関する量的相関情報となると考えられ、これらの過程での寄生虫遺伝子の役割を厳密に調べる道が開かれる。

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